採算効率の良くないことを“こなせる”農家になりたい。
連日収穫、連日出荷。12月ってこんなに走ってたかな、そんな2014年の師走ももうおしまいが見えてきましたよ。
アスパラ菜。アスパラのような風味のある茎葉と黄色の花がクセになる摘み菜の一種。別名はオータムポエム。
冬が厳しくなるにつれて水分がなくなり、茎も筋張ってきます。摘み取るのに手でポキンと指で折れる箇所が、どんどん花蕾のほうへと上っていきます。ようするに美味しく食べられる部分が短くなっていく少なくなっていくということ。そうなると音吹では基本的に収穫を終了させます。
基本的。
と、いうと、基本的でない場合もあるわけです。
これ、通常摘み取れる茎葉の長さよりもかなり短くして収穫しています。5-10cm程度でしょうか。この短さならまだ茎も柔らかい、筋が少ない。
このアスパラ菜、晩秋から初冬にかけて、畑にあまり花の見えないこの時期に貴重なエディブルフラワーとして己の立ち位置をキープしています。
この花のない時期でも花を使いたい方がたくさんいらっしゃいます。そんなわけで規格外のこの大きさ・長さで収穫するのです。
インパックするととてもキレイですね。
ところが…。
経営に即して一言であらわすと、採算効率最悪ー(*_*)
同じ金額の野菜を売るのにかかる労力、時間に比べて何倍もの手間をつぎ込むことになります。まぁ大変。
このアスパラ菜に限ったことではないですが、野菜の一般的な規格とは実によく考えてあるのだなぁと感心することがありまして、そこをズレた規格で何かをしようとすると、手間やなぁ、と感じることがあります。これは非常に感覚的なものだけど、音吹の場合は、この「手間やなぁ」が脳裏をよぎり始めたら、いよいよその野菜の収穫を終えるのです。アスパラ菜で言うと、ポキンポキンと指で折れる部分が短くなっていって、いくら摘み取っても摘み取っても収穫量が増えないー!となってきたらおしまいです。
それはすなわち旬の時期を過ぎる、ということともリンクすると思います。旬のものは美味しいだけではなく、収穫し準備する農家にとっても合理的なのだと思います。(あくまで、まったく手をかけない露地栽培に限り。そしてこれは余談。)
さて、このアスパラ菜。前述したとおり、それでも花が欲しい!というオーダーをけっこういただいておりまして、出荷の準備に余力のある時に準備しています。採算効率が最悪なのに何で収穫するのか。
そういう採算効率が悪いことがとても楽しいからです。
この花菜、お皿に並んだらどんなふうに映えるのだろう、花はどんなふうに飾られるのだろう、って考えるだけでワクワクする。ひとつ花を摘むたびにイメージします、とても楽しい時間です。
このアスパラ菜1パックに使った労力や時間をすべて換算して1パック分の金額はじきだしたら、とてもじゃないけど相手さんに請求できるものではないものになります。音吹は生産専業農家なので農はキレイごとだけではない事業だと思っていますし、あんまり情緒的な部分ばかりに傾き過ぎると経営的には厳しくなるばかりです。効率の悪いことはできる限り避けるべきだということは分かってるのですけども…ふむー難しい!
だから考えた。
とにかくこの2,3年は農家としての基盤をつくって揺るがないところへ持っていこう、と。それは経済的にも潤ってるし栽培技術的にも自分なりの解を見つける、というあたりで。そして、ぼくだけではなく音吹のベースを担ってくれる人をしっかり育てて、余力をつくる。
そしてその余力を使って、ひとつひとつの相手さんの細かすぎるオーダーに応えていこうじゃないか、という。
トマトをつくりたい場所はどこでもいい!というまずつくりたい野菜から考える農家。この畑に合う野菜を何でもいいからつくろう!というまず畑から考える農家。ぼくは後者のタイプです。ベースを整えた上で、できることを増やしていきたいと考える性質です。まず土台、それからやりたいこと。
タネツケバナ。クレソンに良く似た水田に生える雑草です、おいしい。味もクレソンのよう。
こういうの、採集して、お届けできる(余力のある)農家になりたいんです(^^)
音吹じゅん