草を通して考える、音吹の立ち位置。
雨音が恨めしいような、ありがたいような。ゆっくりとパソコンの前に座ってこうしてブログを書く時間を確保できています。
もともと文章を書くのは好きなのですけれども、農業を家族だけで好き勝手にやってた頃とは違い、また商売として農業経営を俯瞰する視点をもとうと意識するあまりに、どうも書きたいことが書けなかったり、作業で忙しいことを理由にしたり、ブログから遠ざかってしまっている今シーズンです。
そうこうしているうちに、少しずつですが畑の草の姿・種類も移り変わってきています。
シロザです。シロアカザともいう晩春から初夏にかけて目立ち始める雑草。アカザ科の雑草で、アカザとの違いは生長点付近が白いか赤いかで、見ればすぐに分かります。
お浸しなどにして食べると、ホウレンソウの代用として有用。ちなみにホウレンソウはアカザ科で、穂や花はこいつにそっくりです。
生育するとかなり太い茎になって邪魔なやつではありますが、大原の野を駆け回って食材を探す野草料理のあの人などはよく採取していかれる草のひとつです。
この画像は数日前のものですが、植えつけたレタス、白いのは不織布、その下にはアブラナ科の葉物が植わっておりましたが、ほんの少しだけ、先日の朝市に収穫してしまいました。
この畝間、うっすらと草が茂りつつあるのですが、拡大して見ますと、、、
幼いクローバーが。
これは種を蒔いたものです。緑肥として畝間にガサガサ増やしたいなと種蒔きしたのですが…
なかなか育たない。
厳密に言うと、これは白クローバーいわゆるシロツメグサですが、生育適期としては3月から初夏までくらいなのでしょう。播種したのは4月頃で、少し暖か過ぎるのが原因なのか、あるいは初期生育が緩慢なのか。
緑肥という捉え方を本格的に畑に持ち込もうとすると、いろいろと意識の転換が強いられてきたように感じています。いや、自然とそう感じるように、もともと根底にあった園主のスタンスを、よりはっきりと浮かび上がらせてきてくれたというか。
人為的に育てようとすると育ちにくいこのクローバー。
今年最初の草刈りを二週間ほど前にした際、例年ならば地際ギリギリまで刈るところを5cmほど高めに草を残しながら刈りました。
すると、自然に繁茂しているクローバーの生長点を刈り切らずに少し残してしまうことになります。刈り残されたクローバー、繁茂力がとても旺盛で現在畦道には青々と再び繁り始めたクローバーをよく目にするようになっています。
この生育繁茂再生力を活かして、畦道にグランドカバープランツとして繁ってくれないかなと期待しています。
緑肥を通して、何と言うか、今まで以上に野の草に興味がわいてくるのですね。わざわざ種を買って畑に蒔いたクローバーはなかなか育ってくれないけど、自然に生育するクローバーはとても元気。
面白い。
いろいろ考えていると、自分の農家としてのスタンスにまで至ります。
例えばこいつ。
キイロカタバミ。
早い畑では目にすることができ始めています。このカタバミは明治頃にやってきた外来植物で、南アフリカ原産です。
日中に葉が開き、夜間は閉じます。少し酸味のある葉、可憐な花、食用としてもアクセントのある草で、採取しにくる料理人さんがよくいらっしゃいます。
見ててカワイイですし、食べられるし、ぼくは好きです。
が、専業農家さんにとってこのカタバミはメロン黄化えそウイルスを保毒していることがある厄介な植物です。ミナミキイロアザミウマという害虫がいますが、このウイルスを媒介してウリ科に結構な被害を与えます。
おそらくキュウリを専作される農家さんなどは超敵視されるのではないでしょうか。見つけたら除草剤~、みたいな感覚なのかな、よく分からないですが。
ここで、自分ならどうするだろう、と考えます。…考えるまでもなく、ぼくはカタバミを残します。
キレイな野菜を収穫して、秀品率を上げて…これは農家の本筋だと思いますので、もちろんその点を意識してはいるのですが、誤解を恐れずに言いますと、専業農家さんのそのキレイな野菜を採るための作業の多くに、そこまで徹底する必要が果たしてあるのか??と感じることのほうが多いのですね。
そんなに除草剤まくー?農薬ぶっかけるー?野菜と言っても生物なんやし、ちょっとくらい傷があってもええやん、食えるし。
という、感覚でいます。
除草剤や農薬の是非について論じても仕方がないし、各人それぞれの考えでもって動けばそれでいいですね。全滅を免れない状況はいくつでもありますし、そんな時に生計を立てるために必要な薬剤散布はきっとあるでしょうしね。
ただ、日本だけでなく世界を取り巻く薬剤散布の状況なども少し気にかけておくべきだとは思います。ミツバチの激減に影響を及ぼしている神経毒であるネオニコチノイド系の農薬をガンガン薦めている国は日本とアメリカくらい、昨年5月には逆にネオニコチノイド系農薬残留基準(ホウレンソウにおいて)が緩和されているなど、世界の情勢とはまた違っています。農薬の散布回数や濃度を下げても“効く”結果、減農薬認定される農業に寄与されるネオニコ農薬、その是非はもう個々人で判断するしかないのが現在の日本農業の現実のひとつでもあります。(というか農業ビジネスに翻弄されるのは昔から日本の運命みたいなもんか)実際に現場レベルで、最近ミツバチがいないという話はよく聞きます。それがネオニコ農薬に因るものなのかどうかは分からないので、いたずらに農薬の危険性を煽って、うちは使ってないよ安全だよ!と言うつもりは毛頭ないです、そんなんめんどいですし専業農家さんをすげーと思っています。
ただ、知って、知った上で判断する機会はあってしかるべきだと思う。感情論や理想論だけで使用する農家さんを否定するだけでなく、ご自身で判断なさってください。
話がそれました。
いろいろ考えると、あぁオレは別に専業農家として市場でも通用する野菜を栽培することを追求してるわけじゃないな、という立場にいることがより明確に分かってきました。
畑の一角に育つ野生のマロウ。
なんて可憐な、淡い花。
オオイヌノフグリ。
どこにでも見ることができる春の草花。雄犬の金玉。
カキドオシ。
初夏には隣の家の垣根を飛び越えるほど大きく育つからこの名前。
それぞれ情緒があっていいです。
美しく管理された生産現場はそれはそれで好き。専業農家さんの突きつめられた技術の粋。素晴らしいものがあります。
でも雑草がいないのは、うん、ぼくは寂しい。古来から日本に住む人が慣れ親しんできた草はもとより、外来であっても今の日本のそこかしこに自然と育つ草花の、主張しない美。里山の美。
こちらはスズメノエンドウ。
緑肥としてヘアリーベッチを育てていますが、このスズメノエンドウも似たような草です。チッソ固定し、半立性に繁茂する。
ヘアリーベッチも春蒔きだとなかなか育ちにくいけど、雑草としてそのへんにいるエンドウはグングン育ってる。そして畑に自然とチッソ固定してくれています。
人間のできることなんてたかがしれてる、という視点は音吹にとってとても大切なことなのです。
またね。
むっちゃ好きやわ 音吹畑さんのこういったスタンス
文章もセンスあるし愉しいなぁ〜〜❤︎
ありがとうございます!ぼくはericoさんの豪快さ、大好きです(^^)/